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ずっと富国強兵というか貯蓄強兵みたいな経済政策が大きくて、結果としておカネが金融機関に集まってしまったんです」「金融機関におカネが集まってしまったなかで、資金偏在が生じている。
国の政策のあり方は、いままでは貯蓄も投資もバランスしている前提で、日本固有の金融機関制度、タテ割り〔業際〕をつくってあった。 ところがバランスがくずれて、おカネはあるけど投資の機会がない。
そしたら、おカネは国内で厳しい競争をやるか海外に出ていくかしかない。 国内では為替リスクもないので、みんな国内に投資したいから、弱肉強食になる。
力の強い都市銀行が地方銀行や相互銀行を食っていくというのが典型的です」「都市銀行がきて地場の顧客を全部とってしまって、地方銀行や相互銀行は、おカネを有価証券に運用するしかない。 有価証券というのは、市場が東京にしかないわけです。
一言でいえば東京集中になった。 ところが東京には事務所しかもっていない。

ノウハウもなにもないわけです。 その結果、有力な銀行や証券会社の植民地みたいになっていくしかないわけで、彼らのいうなりに海外や国内の有価証券を買うしかないんです」「金融機関は業態別にきちんと分けてあるにもかかわらず、地相銀の基盤はがたがたになっている。
より弱小な金融機関は、国内の基盤ががたがたになって海外へ出ている。 等しく海外へ出ていっているのではないんです。
実は、都市銀行などに食い荒らされた脆弱な部分のおカネが、海外に出ていっている」「かつての金融大国のプロセスをみますと、イギリスでもアメリカでもフランスでも、国が豊かになったときは、国づくりをやってるんですよ。 下水道をつくるとか国をきれいにするのが、だいたいの政策の基本であるのに、そのプロセスがなくて、どっと海外に出ていっているわけです」都市銀行を中心にした大銀行が、中小企業や小口の顧客を対象にしたリーティル部門に進出し、強引な貸金セールスをしているのは、第二章でみたとおりである。
「金融の自由化、国際化」とは、出口課長のいう「弱肉強食」が国境を越えた国際的な規模で進行することである。 また、都市銀行の主導で、法で定めている業際もなしくずしになっている。
出口課長の話には、つねに都市銀行のことが念頭にあり、都市銀行に食われていく弱小な金融機関の状況についても、なかなかの正論をはいた。 だが、株式投資も海外投資も、すべて都市銀行の侵食のせいのようにいい、肝心の生命保険会社とのかかわりは、語りたがらなかった。
そこに生保業界の微妙な立場があるようだった。 生保協会のある関係者は、名前を明かさないという条件で、つぎのようにいった。
「大蔵省には、金融制度調査会とか保険審議会とか、いろんな調査会や審議会がありますが、日本ではみんな密室で決まってしまうんです。 業際問題を解決するには、極端にいうと、新聞なんかに銀行の主張と生保の主張を並べて掲載し、国民に投票してもらったらよい。
そういう性格の問題であり、大蔵省は、大多数が投票する正しい方向に解決すべきなんです。 要は国民経済的にロジック(論理)がとおっているかどうかなんです」「金融の自由化、国際化」は、それが国民の利害にとってどうなのかということをぬきにして、密室ばかりか海の向こうとのかけひきなどで進行している。

その意味では、これまたなかなかの正論だった。 それにしても、国民経済のロジックどおり、なぜ国内の必要なところにマネーが回らないのだろうか。
出口課長は、「それは私にはわかりません」といった。 そして、「国内でおカネが生きるかどうかという話は、国内に投資機会をつくる政策ができるかどうかの話だと思う」といった。
また、「社会資本とか公園とかの公共財は収益性がまったくなく、この分野を私企業でやるというのは、世界でどこでもなかったし、これからも永遠にないと思う」と断言した。 彼や生保業界の関係者がいうように、この国の金融は、この国の経済政策と深く結び付いている。
なにしかし、生命保険会社についてもヘマネーが自然に集まってしまったわけではない。 この国の一方の極にマネーが偏在する経済構造のもとで、大企業本位の経済政策がもたらした国民の将来不安や貧困が、未曽有の生命保険大国を生んだといえる。
よりも大きな「資金偏在」は、マネー大国の富が大企業を中心とする一方の極に集中し、国民大衆には回ってこないところにある。 国民大衆の購買力が乏しくては、真の意味の内需は拡大のしようもないが、いま実行中の「内需拡大」策は、もっぱら大企業の需要に応えるものとなっている。
このような大企業本位の「民間活力」に頼っているかぎり、出口課長がいうとおり、社会資本や公共財の充実は「永遠にない」多くの国民は貧しいがために、現実の日々の暮らしを切り詰め、不安を少しでも解消しようと保険に入り、あるいは無理算段の貯蓄をしている。 それは、けっして豊かでマネーがあり余っているからではない。
N作成のファィナンシャルプランニング読本「暮らしのあらかると」も文中で活用している、貯蓄増強中央委員会「貯蓄に関する世論調査」(八七年)を見ても明白である。 この調査の「貯蓄目的の推移」(複数回答)で、八○年から八七年のあいだに貯蓄目的がどう変化したかをみてみる。
「老後の生活費」のためというのが、最もきわだって増えており、三八・四%から四六・一%になっている。 「こどもの教育費・こどもの結婚資金」のためというのも、五三・五%から五七・五%に増えている。
教育費の高騰や老後の不安が大きくなった結果を反映している。 一方、急激に減っているのは、「土地・建物などの資金」のためというもので、三一・○%から二○・四が、近年の〈国民のニーズの変化〉は、彼が書いているように〈高齢化の進展〉と〈公的医療保険制度の改革が実施され〉た結果、〈医療ニーズが増大・多様化している〉にすぎない。

〈医療ニーズ〉なるものは、医療への公的保障を圧縮された結果、やむなく医療保障保険などの「買う医療」を求めざるをえなった。 国民は、社会保障や福祉制度の改悪によって、半強制的に「買う福祉」や「買う医療」に誘導れていた。
だが、》国民の老後への不安の増大も、高齢化社会の到来を口実にした社会保障の削減が、大きな原因となっている。 同じ著書のなかで、S生命の安川勤市場開発部商品課調査役が、「商品開発の新潮流」について書いている。
彼が〈豊かな老後への準備〉であるという〈個人年金保険〉も、〈今日でこそ好調な販売実績をあげているが、ほんの一○年ほど前までは、消費者の意識〔関心〕は低く〉、また、〈生保会社の経営に占めるウエイトも小さなもの〉だった。 ところが、〈情勢に変化が起こりはじめたのは〉〈政府が主として財政面での制約から社会保障給付の見くなった。
このところの住宅建設ブームも主体は貸家であり、国民の多くは、地価狂乱の結果、持ち家をあきらめざるをえなくなったというのが実態である。 レジャー時代といわれながらも、「レジャー資金」のためというのも、一○・○%から六・一%へ大幅に減っている。

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